古本

作品選びに、よく青空文庫を利用します。季節や、その時共有したい想いを反映する言葉で検索して、出会った作品を読むこともあれば、その作品の著者をさらに追いかけて別の作品を探し出すこともあります。辞書で言葉を調べる行為に似ています。知りたい言葉の解説文の中で新たに知る言葉や、上下左右に記載された言葉もついでに調べる。こんな自然に語彙を増やすことに結び付く行為は、印刷判の辞書ならではないでしょうか。ピンポイントの情報が得らえる電子辞書は便利。でも、ムダの中にある新発見のチャンスを見過ごしそう。青空文庫でざっくり調べた後は、お財布と時間が許す限り、古本で作品を手に入れます。電子情報では決して得られない本の手触りや、装丁や挿絵などの本そのものにかけた手間ひまなど、そういうもの全てを加味して、行間を読み、自分の声にしています。写真は昭和62年発行、阿川弘之ら編の志賀直哉小説集です。外箱の挿絵は、熊谷守一。今月からのブックカフェ朗読会では、この本から大正元年に書かれた「正義派」を紹介します。案外時間がかかる作品選びは、朗読をする中で、一番大事で、一番好きな作業。効率重視の手早い方法があるようですが、私は寄り道いっぱい、ムダなこともしながら、はるばる出会った作品を読んでいます。長っ。